『キューポラのある街』

 キューポラとは、 鋳物の原料の銑鉄や屑鉄をとかす溶解炉のことである。 職人気質で腕のいい炉前工、 辰五郎の一家は、鋳物の街川口に住んでいる。 辰五郎の娘で中学3年になるジュンは、 人一倍感受性が強く、叔母の出産に付き添って大きなショックを受ける。 ジュンは、 それからのち性に対して微妙な気持
ちを持つようになるが、 初潮のおとずれとともに、しだいに性に目ざめていく。ジュンは、家が貧しいので進学か就職かで思い悩むが、社会のさまざまな問題を身近に体験して、 働きながら学ぶ決意をする。 一方、ジュンの弟のタカユキは、 たびたび家の者を困らせながらも、 世の中のことがわかるにつれて、すこしずつ成長していく。がんこな職人気質ゆえに失業していた辰五郎も再就職が決まり、 一家は幸せな気持ちにつつまれる。
  物語は、ジュンの自我の目覚めを縦糸に、一家を取り巻く社会を横糸にして、 あくまで実生活に基本を置きながら、ドラマチックに展開していく。 一家に対する作者の視線は、つねにあたたかく、読む者をほのぼのとさせてくれる。

 姉妹編に、
   『未成年』『赤いらせん階段』『さくらさくら』『青い嵐』
などがある。

〔初版・1976年〕(恩田 満)
〔『子どもの本と読書の事典』(岩崎書店より転載〕

                       『キューポラのある街』
                         <名作の愛蔵版>
                      早船ちよ 作/鈴木義治 絵
                               理論社
                       230×160ミリ 230ページ
                            [中学生向き]

 

 


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